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芸天立像(ぎげいてんぞう) 秋篠寺(あきしのでら)
天平・鎌倉時代 脱活乾漆(だつかつかんしつ)・木造 重文

<鎌倉仏師(ぶっし)が蘇らせた天女像>

平城宮跡の西北、秋篠の里の静かな樹林に囲まれた秋篠寺には、創建当初の仏像が四体ありますが、いずれも天平時代の脱活乾漆(だつかつかんしつ)の頭部を残し、破損した体部は鎌倉期に木造に改められています。
伎芸天像もそのうちの一体で、頭部と体部との継ぎが自然で、さわやかな表情としなやかな体の動きにも違和感がなく、しっとりとなじんでいます。
鎌倉時代の奈良には、運慶(うんけい)など慶派(けいは)と呼ばれる仏師たちが活躍し、天平彫刻の復興をめざして研鑽(けんさん)していましたが、この像もそうした仏師たちの卓越した技と祈りの心によって新しい生命を与えられ、天平の天女として蘇ったのです。

写真・解説/小川光三(飛鳥園)