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地蔵菩薩立像 東大寺知足院(ちそくいん)
鎌倉時代 木造 重文

<文使いの地蔵さま>

東大寺知足院(ちそくいん)の本尊は秘仏の美しい地蔵菩薩で、この地蔵尊には次のような話が伝えられています。
治承(じしょう)の乱で焼けた東大寺の復興に当たった造寺の長官藤原行隆(ふじわらのゆきたか)は、無事大仏の大修理の任務を終えた後、病死しました。
残された幼い娘は嘆き悲しみ、日ごろ父が信仰していた地蔵尊の手に手紙を結び付け、「どうかこれを父のもとに送って返事をくださいますように」と一心に祈ってお願いしますと、七日目の朝、地蔵尊の手に新しい手紙が結ばれていました。開いてみると間違いなく父の筆跡で、いまは観音の浄土で楽しく暮らしていることが詳しく書いてあったということです。
以後この地蔵尊は「文使いの地蔵さま」と言い伝えられています。

写真・解説/小川光三(飛鳥園)