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伐折羅(ばさら)大将立像(十二神将)新薬師寺
天平時代 塑造(そぞう)・彩色 国宝

<都を護り国を護る神将像>

「咲く花の匂うがごとく」と万葉に詠われた平城京は、華麗な文化の華開く平和な都と見えますが、聖武天皇にとっては長屋王の変や藤原広嗣(ふじわらのひろつぐ)の乱などの事変が相次ぎ、やがて恭仁宮(くにのみや)、紫香楽宮(しがらきのみや)、難波宮(なにわのみや)と都を転々とされる一方、諸国に国分寺を建立し、大仏の造営を開始するなど激動が続きます。
こうしたことから天皇は健康を害され、光明皇后(こうみょうこうごう)は病気平癒のため、春日野の南に新薬師寺を造営されました。
この寺は丈六(じょうろく)の七仏薬師を九間の金堂に安置し、東西に両塔を配した大伽藍でありましたが、次第に衰微し、今は残された天平の仏殿を本堂とし、丈六の薬師如来の周りに天平の十二神将を廻らせて皇后の祈りを今に伝えています。
伐折羅(ばさら)大将はこの神将像の一尊ですが、昔は天皇を病魔から守護することは都を護り国を護ることで、この像には護国の力がみなぎっています。

写真・解説/小川光三(飛鳥園)