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大日如来坐像 円成寺(えんじょうじ
鎌倉時代 木造・漆箔(しっぱく) 運慶(うんけい)作 国宝

<春日信仰と太陽の仏>

奈良の東、原始林に覆われた春日山の中央には、笠を伏せたような円錐形の御蓋山(みかさやま)がある。
この山は春日大社の神の山として、また奈良の日の出の山として崇敬されて来たが、この山の背後に当たる柳生(やぎゅう)の庄(しょう)の入り口の山間にある円成寺(えんじょうじ)は、万寿三年(1062)春日明神御作の十一面観音を祀ったことに始まると伝えられ、春日の奥の院という伝承がある。
その後平安後期に丈六(じょうろく)の阿弥陀如来を本尊に迎え、門前には浄土式庭園を配して寺観が整備されたが、安元二年(1176)に後白河法王が多宝塔を寄進、その本尊として仏師運慶(ぶっしうんけい)がこの大日如来像を造立した。
大日如来は、光明が宇宙万物を遍(あまね)く照らす太陽を象徴する仏で、これを日の出の春日山の背後に安置したのは、円成寺が春日の山に昇る太陽が出現される聖地と想われていたからであろう。

写真・解説/小川光三(飛鳥園)